オサガメ西パプアからのデータ
突然ですが、質問!
太平洋で今、一番多くのオサガメが産卵する場所、ご存知ですか!??
そう、インドネシアの西パプア州です。(以下、「西パプア」と記します)
ELNAはパートナー団体YPLIと、絶滅寸前の危機にある太平洋のオサガメを守る活動をしています。
今日はそんな西パプアでの直近の産卵状況と、現地の人達とどんなやり取りが繰り広げられているのか・・・というELNAの仕事の日常をお伝えできればと思います。
ちなみにオサガメはコチラ。世界一でかいウミガメで、甲羅の模様がいわゆる「亀甲模様」の6角形ではなく、スイカのように縦線が7本入っているだけなので、見分けが簡単です。
▶西パプアからのデータ
先日、西パプアの海岸から、データが届ききました。
例えばこんな産卵データです
項目はインドネシア語で書かれております。日本語に直すと、産卵日・産卵番号・産卵場所・ウミガメの種類(上陸or/and産卵)・巣の被害状況など・・・を書く欄があります。
上の表から、こんなことが分かります。
ワルマメディ海岸で3月に調査データの記録を担当してくれたのはKorinusさんで、3月5日に44-52の区間でヒメウミガメが3頭上陸して無事に産卵を終えて帰っていきました。Korinusさんはこれらのデータを何らかの方法でWerimonさんに伝え、WerimonさんからYPLI(ELNAパートナー団体)の本部Jakartaへデータが4月5日に送られて来たのだなと分かります。
▶直近の産卵状況はこんな感じ
今、今年度分でELNAまで届いているデータは、ワルマメディ海岸のデータです。ここは夏場に産卵が多くなる海岸です。
見るとオサガメは2022年1月は数回の産卵ですが、5月は10回と産卵が増えてきています。3月からヒメウミガメもそこそこ産卵に来遊してきており、アオウミガメも数は多くないけど毎月のように産卵しています。
▶データは受け取って終わりじゃない。データ管理業務ってこんなこと
現地からデータが届き、「あぁ、届いた良かった」とか「今月も産卵あったね」とかのんきなことを思っている場合ではありません。必ずチェックが必要です。
例えば、先ほどの表を見てウミガメの種類の名前、トリッキーなのがあるのに気付かれたでしょうか?
・Belimbing=オサガメ。和訳すとスターフルーツ。確かに、オサガメの甲羅はスターフルーツの模様ソックリです!
・Hijau=アオウミガメ。和訳すると緑。英語のGreen sea turtleをインドネシア語にしたのでしょうか。
・Sisik=タイマイ。ウロコという意味
・Sisik Semu=ヒメウミガメ。Semuは「擬似」という意味なので、いうなれば”ニセタイマイ”みたいになるのでしょうか・・・?
そう、トリッキーなのはSisik とSisik Semu。西パプアではタイマイの産卵はあるのですが、数は少ないです。西パプアでオサガメ以外に産卵が多いのは、ヒメウミガメなんです。
先日送られてきたデータでは、Sisikが1月に数十回も産卵がありました。そしてその月のSisik Semuは0回。あ、あやしい。。。
▶現地スタッフとのやり取り
こういう時に、ELNAスタッフがする仕事は例えばこんなやり取り。
★やり取り①
まずYPLIのJakartaスタッフに確認
ELNA-I「タイマイがいっぱい産卵あったってなっているけど、コレ本当にあっている?ヒメの間違いではない??」
↓
YPLI-Eさん「おかしいね。多分、ヒメウミガメの間違いだと思う」と回答がある。
↓
ELNA-I「いや、あなたは現地を見ていないので現地に確認してください」とお願いする。
★ やり取り②
ELNA-I「このような間違いがよくあるなら、データの書き方を工夫した方が良いのではないか?」
↓
YPLI-Jさん:「・・・」無回答
↓
ELNA-I「Sisik Semuという名前を変えた方が良いのではないか!?例えばLekangとかAbu-abuとか※」と提案してみる ※Semuは西パプアでのヒメウミガメの呼び方で、地域によっては上記のような名前で呼ばれる
↓
YPLI-Jさん:「分かった。今度、海岸スタッフから電話がかかってきたら言ってみる」
↓
ELNA-I「(自分から電話しろよって思いつつも・・・)海岸スタッフからの連絡ってあるの?どれくらいの頻度であるの??」
↓
YPLI-Jさん:「ほとんどかかってこないです」 ※「おいっ!」ってツッコミしてください
★やり取り①②の結果、
約1ヵ月後に「タイマイはほとんど産卵が無いから、ヒメウミガメの間違いでした」と連絡が。そして次に送られてきたデータでは、Sisikは産卵が0になりSisik Semuに修正されていました。
この”SisikとSisik Semu問題”以外にも、例えばオサガメの産卵が多い時期なのに、突然、産卵日が16日から始まることなんていうのもあります。
つまり、「5月は産卵が多くなるはずなのに、1~15日は産卵なかったの?」あ、、あやしい。。
こんなことの繰り返しです。
これはYPLI JakartaスタッフがELNAスタッフより先に気づいてくれて、確認してくれている最中です。
やり取り①②のような積み重ねでYPLI職員も成長してくれており、「成長したなぁ」という場面を見ると、「良かったなぁ」「有難いなぁ」と嬉しくなります。
こんな感じで、ELNAはオサガメ保全活動も実施しています。
コロナ禍でELNAスタッフが直接渡航できない状況が続く中、YPLIスタッフにはより頑張ってもらい、ELNAも人材育成に力を入れながら取り組んでいます