仔(ちい)さいカメ屋さんへ~うみがめ研究会OGの想い~
カメ業界に入り2年になる岩井です。思っていた以上にカメに関わる人達は世の中にたくさんいる!ということを感じています。
さて、東京海洋大学に「うみがめ研究会」通称“かめ研”というサークル団体があります。ここに、日々ウミガメについて学び、研究を重ねる多くの若者達がいます。長期休みになれば、小笠原海洋センターへボランティアに来てくれたり、ストランディング調査やイベントのサポートも積極的に参加してくれる頼もしい学生達です!
そのかめ研OGの1人である高瀬さん。ウミガメ調査研究で、今現在もELNAにご協力いただいている方です。
高瀬さんから見たウミガメの世界と想いをご紹介します!
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振り返って想うこと
仔(ちい)さいカメ屋さんへ
東京海洋大学うみがめ研究会に入会したのは学部2年の秋の頃、サークルに参加するにはやや遅い年代である。
元々ウミガメに興味はあったものの、なかなか活動に参加できなかった、
ある日、部会に行く同期の大塚に誘われ、連れて行ってもらったのが全ての始まりである。
それから約10年。未だご縁があってウミガメの世界に関われてとても嬉しく想う。
ELNAさんのHPを改めて拝見すると「カメ屋さん」という記事に辿り着いた。
記事中でうみがめ研究会について触れられており、10年前の経験が強く思い出された。
この記事は私の中の思い出が、何かしらの形で後輩である仔(ちい)さいカメ屋にとって参考になればと思い、書き留めたものである。
入会当時、第12代会長である小鍛冶が既にインドで予定されていた国際学会での発表を描いていた。かめ研は菅さんをはじめとするELNAの皆様にご協力いただき、関東沿岸域に死亡漂着するウミガメの消化管内容物を調べている。関東沿岸は日本の国内でも死亡漂着数が高く、最後に食べた「晩餐」を手掛かりとした死因解明を目指していた。これまで蓄積されてきたデータは国際の場で未発表であり、小鍛冶のリードに感化され、国際学会に憧れるメンバーが多かった。もちろん、私もその一人である。
だが、実際に国際学会に行くには課題が山積みであった。
当時のメンバーの最高学年は学部3年である。そしてかめ研は学生サークルである。名前にはうみがめ研究会とあるが、誰も「研究」を知らなかった。
研究内容はELNAさんにご指導いただいていたものの、これまで蓄積されてきたデータに欠損も多く、恥ずかしながら改めて記録を集め直すことから始めた。データが揃っても、次は解析方法が分からない。エクセルも未知の世界である。部品であったPCも古く、壊れる寸前である。仕方なくデータを全て紙に印刷し、部室では広げきらないので大学内のフリースペースをかなり占領して、マニュアル的に内容物を数えることから始めた。メンバーとディスカッションし、結果を菅さんにご相談するが、今度はご指摘を正確に理解できない。ようやく内容が整ってもポスター作成が分からない。英語も怪しい。ポスターが完成しても大型プリンターの使い方が分からない。全て整っても、インドへの渡航費確保の手立てが分からない。
もう「やるしかない」と思うしかなかった。
特に小鍛冶と伊藤は最高学年として、後輩を気遣いつつ取り組んでいたのが記憶に残っている。
そして多くの人に支えられながら、国際学会の参加が叶った。
ゼロベースから、怖いもの知らずで行動ができたという点は学生ならではだと思う。
しかし、「やるしかない」と一歩一歩行動して行くのは、果たして若輩者に限定されることだろうか。
職業柄、研究機構の中で、様々なプロジェクトが立ち上がる場面に同席することがある。
ベテランの研究者が揃う中で、自分がやりたいことを実現させる為には、誰しもが「やるしかない」と、一歩一歩歩んでいる事に気がついた。
いかに取り組めるか、実現のために工夫ができるか、が実現への鍵である。
国際学会への参加を通して、この経験が早くにできたことは確実に現在の糧となっている。
かめ研が国際学会で発表したのはインドが初めてであり、その後もほぼ毎年参加を継続しているが、
先輩が行ったから例に倣って、というスタンスではなく、「自分達が行きたい」という気持ちを強く持って欲しかった。
特に、海洋大かめ研の名前は以前より国際学会の場で知られてきてはいるものの、まだまだ知名度は低い。
そんな学生団体が発表をし、知見を共有するためには、「読める」要旨を用意することが必要最低限である。
この時期になるとかめ研のメールアドレスに連絡を入れ、要旨の添削をさせてもらってきた。
ある程度学会参加を繰り返せば、ノウハウなども集まるため、レールの上に乗りやすい。
後輩たちが自分で足掻いて、問題解決のために動く姿が見える日を待ち望んでいた気がする。
そしてついに今年、ついに後輩側から要旨添削の依頼がきたのである。
かめ研は一年で世代交代をするため、これまで関わっていても、後輩との連絡が途切れてしまうことが多かった。
その中で今回メールが入ったということは、自分達なりに要旨を添削してくれる人をきっと求めたからである。
メールが入った時点で直ちに同期のカメ研LINEに報告し、小鍛冶、大塚、伊藤の皆んなで喜んだ。
後輩勢が自分達が経験して良かったと思うことを、彼ら自身で経験している姿が垣間見れ、とても嬉しかった。
かめ研の後輩たちには、自分達が頑張っている限り、OB・OGがいつでも支えるつもりであるということを覚えておいてほしい。
国際ウミガメ会議に学生サークルが行き、研究者と意見交換するためには、菅さんの紹介や配慮が欠かせなかった。けれども、その上で、国際ウミガメ会議の場は、学生研究サークルを快く受け入れてくれた場であるということを知って欲しい。日本の他の学生サークルのカメ屋には、もし学会参加や国際的な研究者との交流が目指すところであれば、是非これを機会に臆せずチャレンジしてみて欲しい。
そして、もし国際学会への参加が目標になければ、何かしらに真剣に取り組み、実現のために必死になる経験を是非して欲しいと思う。
これまでのかめ研を支えてくださった皆様に御礼申し上げます。
いつかこの経験が、皆様にとって何らかのヒントになりますように。
第12代 うみがめ研究会
高瀬