2000回の産卵が周囲たった1.4kmの小さい島に集約!重要な産卵地に成長した「セガマ・ブサール島」の今

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あなたは、「自分がやらなきゃ、誰がやんの?」って状況に追い込まれたことはありますか?
そんな時って、ものすごいプレッシャーと不安が入り乱れて、「でも、やらなきゃ!」って自分を奮い立たせたのではないでしょうか。
今回ご紹介するのは、インドネシアの灯台しかない小さな島、「セガマ・ブサール島」でおこなわれているタイマイ保全活動プロジェクトの今です。このプロジェクトを現在遂行している筆者も、「自分がやらなきゃ」という想いで活動を引き継ぎ、奮闘しています。今日はそんな思いを共有することで、励みや前向きな気持ちなど、読者のみなさんの心を動かすことにつながればと思います。

このプロジェクトを始めたのは、アキル・ユスフ氏です。1990年代に日本人の一行が、インドネシア中のウミガメ産卵地を直接歩き回って、タイマイの生息数と絶滅危惧の状況を調査しました。その時に通訳で同行していたのがアキル氏で、絶滅寸前の危機にあるタイマイを救うためインドネシアウミガメ研究センター(YPLI)を立ち上げ、プロジェクトが始まりました。その活動を資金・実行ともにサポートするためエバーラスティング・ネイチャー(ELNA)という我々の団体もできあがりました。

▲一番右がアキル・ユスフ氏

ELNA創設者の菅沼曰く、絶滅の危機に瀕したウミガメの数を増やすためには、「自然のままを保つ」ことが大事とのこと。
「自然のままを保つ」 のは、“何もやらない”のではありません。絶滅に瀕する原因の多くは「人間の活動」によるものなので、その人為的な部分を特定して取り除く作業をします。
活動の3ステップはこちらでした。①現場での「生態調査」 ②地元住民との共働 ③他地域へ知見の活用・拡大

▲ 右側2人がアキル氏とELNA菅沼。1997年、セガマ・ブサール島にて

このような作業を地道に積み重ねてきた結果、「セガマ・ブサール島」のタイマイは劇的に生息数を増やしました。なんと20世紀の激減時に2割まで減少したのですが、それ以上に回復することに成功したのです。その数は、国内だけでなく世界においても最大級の産卵地にまで成長するという成果を上げることができました。→詳細はこちら

▲ 海へ向かう赤ちゃんタイマイ。2004年、 セガマ・ブサール島にて

筆者がこのプロジェクトを引き継いだ時には、既に生息数が回復してきている途中でした。最初はよく分からず、データの取り纏めをしていました。現地訪問も先輩スタッフに引きつられて付いていくという状況。2009年6月6日、アキル氏は交通事故で亡くなりました。YPLIはスタッフを精力的に率いていた存在を失いました。
後日、筆者は一人で現地訪問するようになり、今はYPLI 職員を先導して活動を進めています。1990年代のように国内中の産卵地をめぐる調査も、数年間実施しました(下写真)。その中で、他地域では未だに卵の乱獲が続き、自然ふ化する子ガメがほぼほぼいないという憂慮すべき状況を目の当たりにしました。
今、ELNA活動地の自然環境を後世に残す事の重要さ、そして自分の役目の重要さを実感しました。

「セガマ・ブサール島」の近くには、天然資源が採れます。この島はかつて石油会社に買収されようとしていました。島の所有者をアキル氏が説得して、ウミガメのためにYPLIに島を貸してくれたという経緯があります。今の賃貸契約は3~5年契約で都度更新しています。所有者 の気持ちしだいで、今後いつどうなるかは分かりません。

今、物事が悪化する前に、インドネシア政府にこの島の重要性・希少性を知ってもらい、今の環境を残してもらうよう訴えていく必要があると感じています。一方で、知られることによって政府管轄になってしまい、今までと違う保護手法を強いられて産卵環境が悪化することも有り得るかもしれません。誰にも分かりません。でも、資金状況や将来を考えれば進めていくしかないでしょう。

先日、YPLIスタッフに「セガマ・ブサール島」を訪問し、状況調査をしてもらいました。他組織のウミガメ担当スタッフのフィールド研修が目的で、成果を共有・拡大することができました。正直今まであまりやれてなかった部分で、今後はこのように地域住民の啓発や知見共有に注力すべきという想いで、近年力を入れ始めたばかりです。→研修の様子はこちら 

コロナ禍の影響で長期間、現地訪問することができず、数年ぶりの訪問でした。長年放置したため、詳細な情報が取れなかった部分もありますが、ミズオオトカゲによる卵の食害や高波による卵の流出が目立ちました。産卵が増えた分、捕食者のミズオオトカゲも増えているのでしょう。それでも近年まで生まれてくる赤ちゃんの数は増加し続けています。しかし、捕食者や餌量のバランスから、いつか頭打ちになる日が来るはずです。ウミガメ界では絶滅危惧種のウミガメを「どこまで増えたら達成なのか?」世界中の有識者たちで議論されたことがあります。結論はまだ出ていません。誰も分からないのです。しかし、「セガマ・ブサール島」の長期変動の情報が今後も取れればはその結論を導く一助となるでしょう。また、野生動物や絶滅危惧種の保全管理の観点からも有益な情報になると期待されます。

▲ 海中を泳ぐミズオオトカゲ

今、この素晴らしい「セガマ・ブサール島」を、現地の人々のためにも後世に残せることを目指しています。

筆者は、この「セガマ・ブサール島」のプロジェクトの仕事を遂行する中で、「とにかくやってみよう!」という精神を学びました。進めていく中で、何かしらの小さな変化を作りだせた時の嬉しさ、達成感を得られます。困難は何回もやってきます。「自分しか実行する人がいない」淋しさや孤独を感じる一方、応援してくれる人達を思い出すと、「一人じゃない」ことも思い出します。作業する仲間や資金の提供者など、主導者は自分だけでも「一人だけでは実現できないこと」も学びました。

この機会に、みなさんも「やらねばならない困難なこと」に、前向きにトライしてみませんか?

最後になりましたが、「セガマ・ブサール島」のプロジェクトのサポーターを募集しております。
「一人ではできない」この挑戦を、少しでも多くの方に支えて頂けると有り難いです。
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