新年を迎えて
明けまして、おめでとうございます。
エルナは、無事新年を迎えることができました。昨年は、科学と保全活動、自然保護と経済・人の生活との関係や絡みが浮き彫りにされた年でした。
関東のストランディング個体の放射能影響調査も3年目を迎え、ようやくその方向性が見えてきました。小笠原のアオウミガメの産卵数も父島列島で1982巣と記録更新しました。ただ、昨年は台風が頻繁に発生したため、母島列島の調査はいまだKに終了しておりません。5月までには終了させる予定です。インドネシアでは、オサガメの繁殖海岸を占領し、他者の立ち入り禁止にしていた家族の警察による強制排除や海岸所有者の利権を求める欲望など様々な問題が噴出していました。ジャワ海のタイマイ保護地では、灯台所長による卵の密売、漁業者の卵の密漁、監視員の賃金値上げ交渉、産卵巣数のごまかしなどなど、僕らが想像もしなかった問題が露呈しました。一部は解決しましたが、まだ細かな問題が残っています。
放射能調査については、風潮被害や汚染水漏洩など深刻な問題がありますが、エルナとしてウミガメを通して、この問題に真摯に取り組み、得られた結果を公にしていきます。小笠原のアオウミガメに関しては、4月にアメリカのニューオリンズで開催される国際シンポジウムで「小笠原のアオウミガメ、シーズンⅠ 始まり」と題して、世界のウミガメ先進地としての責任をもって、これまで得られたこと、新しく得られたことを毎年発表していきます。オサガメに関しては、カメ以外の問題がようやく終焉を見せているので、やっと直接的な保全活動ができる状況になってきました。繁殖個体数の減少の度合いも緩やかになり、今が一番重要な時期となっています。これまで培った経験を活かし、オサガメの絶滅を防ぐ具体的な第一歩を踏み出します。タイマイは現在6カ所の保全地区がありますが、1か所はほとんど手付かずのまま密猟者が跋扈している状態となっています。また、トカゲ・サル・ネズミの食害問題、高波による卵の水没問題などその島により状況が違います。特にキマル島では急激に増加したトカゲの食害被害は深刻です。島ごとに産卵巣に及ぼす影響を分析し、タイマイを具体的に保全していきます。すべての島を保全するにはまだ何年もかかると思いますが、ようやくそのめどが立ちました。タイマイばかりではなくウミガメ全般に言えることですが、食害率の減少、監視員のシステム強化と待遇改善、これらはすべてふ化稚ガメの増加につながり、資源の増加につながります。
ウミガメ以外でも、小笠原ではザトウクジラの社会構造の解明に向けて調査を行い、今年から新たにサンゴ調査も行っていきます。サンゴ調査は大枠では保全活動につながっていきますが、具体的な調査は保全活動ではありません。当面は、現在、小笠原に存在するサンゴの存在理由と位置づけを行っていきます。皆さんにはよくわからないかもしれませんが、エルナとして長年くすぶっていたこだわりです。