ウミガメは7種いる
今更このタイトルはないんじゃないの。と、思う人はいっぱいいるだろう。ところが、ウミガメの世界でも、種をちゃんと分けて活動している人はほとんどいない。研究対象としては、その種を対象にしているわけであるから、当然のことながら論文にはその種の名前が入ってくる。ところが、保護や保全活動をしている人はどうなのか。たとえば、エルナを例にとってみるとよい。関東周辺でストランディング調査をやっている。これまで調査対象となったのは、アオウミガメ、アカウミガメ、タイマイ、オサガメの4種である。これ以外にも、ハイブリッド(交雑種)やまだ種として独立していないクロウミガメも入っている。小笠原ではアオウミガメをやり、インドネシアではタイマイやオサガメをやっている。保全している海岸には、アオウミガメやヒメウミガメも産卵する。エルナは言っていることとやっていることが全然違うじゃないか、という話である。そうなのだ。このようにごちゃごちゃになって、最近になってやっと気づいたことなのだから。
何か言いたいかというと、種ごとに、場所ごとに、その保全や調査方法や見方を変えて活動なり事業を行わなければ、その種にとって悪影響を与えるだけだ。それなら、それが見えるまでウミガメ自体への接触を極力避けるべきである。標識放流などやるべきではない。全くその種にかかわったことがない人たちが、カメを保全しようというのは、環境破壊や種を絶滅させることに他ならない。特に、オサガメのように絶滅危惧種に至っては、それを保全しようとする人に対して、免許制度や試験制度を導入するべきだと僕は思っている。ただ、今のカメの世界を見てみると、それをパスできる人はたぶんいないだろう。
オサガメの論文をみてみると、非常に面白いことがわかる。ほとんどの人が書いているのは、「上陸してきたオサガメの95%以上に標識を装着した」という記述である。本当にみんな、感心するくらい自信をもち、それを強調して書いている。そして、5年間くらいの標識の再捕率の低さから、オサガメの減少は繁殖地以外にあり、漁業の混獲しか考えられないと騒いでいる。インドネシアしかり、メキシコしかり、コスタリカしかりである。ここに非常に重要な問題が隠されている。問題というより、このような記載をすることが、オサガメの現状に目を向けていない、それすら気付いていないことに、悲しみを感じる。みんさん、なぜだかわかりますか。世界がオサガメに対してこのような現状を作り出している以上、少なくとも太平洋のオサガメが絶滅から逃れられる術はない。
次回はもう少し具体的な話をしよう。