不思議な環境(No.36)

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先日テレビを見ていたら、工芸品に絡めて写真の動物の名前を当てるクイズ番組があった。難易度の最も高いバイオリンの弦に使われるクジラの名前はという問題の次に、べっ甲材として使われるウミガメの名前を答えるというものであった。一般の正解率は、10%程度であったと思う。それをみて、つくづくウミガメの世界はやはり、世間とは全く違うところにあることをしみじみと感じた。僕は、紆余曲折しながら、ウミガメを横目で見ながら、今年で35年目にもなる。その間に様々な人たちと関わってきたけど、この人たちのほとんどは、これらの質問に答えることができると思う。そうしてみると、僕がこれまでかかわってきた人たちというのは、世間的には偏った人たちなのだろう。しかし、真実を垣間見ている人たちであると確信している。マスコミでさんざん自然保護や温暖化対策だとか騒いでいるのは、クイズ番組の正解率からみると、本当は表面的なものなのかもしれない。マングローブの林がエビの養殖などのため開発され、その跡地にマングローブを植える保護運動が一時盛んな時期があった。地球上では砂漠化が進み、そのような場所に植樹をしている人たちもいる。でも、僕が本当にすごいなという人たちはすごく少ない。テレビなどでも、大きな企業が何本植樹したとか宣伝をしているが、マングローブやその植えた木が何本育ったという話は聞いたことがない。これでは、ウミガメの卵を移植する行為が最も重要な保護だといっているのと同じである(独り言のNo.34をみてください)。僕自身、陸上のことはほとんど知らないけれども、地道に植樹をしてどの種が面積にしてどの程度育ったか、植樹したけど失敗したとか、その成果を適正に自ら評価し、その結果を踏み台にして前を見据えて活動している団体を僕は一つしか知らない。高見さんという方がやられているところだけど、本人いわく植樹など全く素人として中国で活動を始め、常に試行錯誤を繰り返し、もうすぐ20年になるという。彼の話のほとんどは失敗談ばかりである。高見さんとは2度ほどしか話をしたことがないが、最初に話した時に、現場を自分の目で見ている人の内面の迫力のすごさに圧倒された。僕とは全く現場は違うけれど、また高見さんはどう思ったかは知らないけれど、僕は話をしていて違和感が全くなかった。みている対象が違っても相手の話がすんなりと消化できてしまう。それは、対象が木やウミガメだということてばなく、それに関わる人たちの中に同じ目線で自分を置いているからだと思う。

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昨年の秋に東京ビックサイトでエコプロダクツというものがあった。著名な企業がエコや地球環境の保護についてどのように考え、実行しているか、自然保護団体などのNGOも多く参加していた。また、このような場でそれ自体を商売にしようとする会社もある。大企業と実践的なNGOを結び付けることを仕事にしているところもある。そういった会社の人がELNAのブースにやってきた。その人曰く、「日本の大企業は、みんながやっているから、もう植林に飽きている。これからは海の環境保護だ。ウミガメのイメージはすごくいい。企業がお金を出すと言ったら受け取るか」要約するとこんなところだ。僕は、大いに感動した。これがまさしく日本の環境保護の姿ではないかと。まるでテレビのCMと同じである。ある意味、現状の不条理を認め、それを出発点にしているということではよいことなのだろう。例えば、アブラヤシから油を抽出する果実を取り除いたものをアブラヤシ毬というらしいが、使い道のないこの毬をパッケージにするという有効利用している会社がある。話は違うが、この油から作ったヤシ石鹸は、日本では自然にやさしい天然石鹸として販売されている。日本から飛行機に乗ってマレーシア半島の東側の上空に差し掛かると、西側のクアラルンプールの空港に着くまで、ずっと目に入るきれいに並んだ緑はすべてアブラヤシである。マレーシアのサバ州(ボルネオ島)では、アブラヤシ農園の進出によりオランウータンが、絶滅の危機にひんしている。アブラヤシはお金になるので、ボルネオのヤシ農場では自動小銃を持った監視員が農園を守っている。これらの監視員がインドネシア側に銃を持って密入国してウミガメの卵を持っていく。まあ、密入国といっても、地元の人たちがバイクで海岸づたいに、様々な商品をお互いの利益を得るための双方向の密輸入ではあるが、彼らにとっては昔から行われていることであり、違和感はないのであろう。アブラヤシに話を戻すが、未使用の材料を利用してパッケージを作ることはよいことだろう、ましてそれらがフェアートレードとなるなら。合成石鹸より天然石鹸を使用することの方がよいことなのだろう、しかし日本の企業が余剰利益を追求しだしたり、そのためにアブラヤシ農場開発の速度が進んだりしないのだろうか。企業の発展努力の枠を決め、最初から企業努力を放棄した経営をするのだろうか。日本の企業の環境に対する深みが見えないのは、僕だけなのか。単純に、車の燃費を2割向上させ、販売数を2割増やせば結局生産されるCO2は同じだと思うのだけど、やはりそれをエコと堂々と言っていることに不自然に感じないのだろうか。生産台数の上限を決めているという話はあるのだろうか。ここ10年以上、日本の各企業は地球にやさしく、CO2削減に努力していると皆言っているけど、その数値が減ったとは聞いたことがない…。本当に植樹に飽きたのかもしれない。(「不思議な環境」了)

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