オサガメとは
成長すると体長が2m近くになります。産卵地のパプアから索餌海域のカリフォルニアまで、片道約12,000kmもの長距離を泳ぎます。また1200m以上も潜水する特異なウミガメです。産卵海岸もかなり限定されています。ほぼ直線的にしか泳げないため水族館の狭い水槽(オサガメにとって)では、ぶつかって傷だらけになるため、飼育は困難です。オサガメは、背中に7本のキールが入っています。また、背中は固い甲羅ではなく皮膚でおおわれているのも特徴的です。
太平洋のオサガメの現状
ウミガメ種の中でも最も絶滅に近いとされているオサガメは、太平洋、大西洋、インド洋に生息しています。その中でも、太平洋のオサガメはこのままでは近いうちに絶滅するだろうと言われています。
マレーシアは1960年代には10,000巣以上の産卵が見られました。オサガメは1シーズンに6回以上、ほぼ2年おきに産卵するのでメスが4,000頭近く生息していたことになります。マレーシアは、産卵メスガメが激減し、2004年に絶滅が宣言されました。メキシコは、1980年頃は、30,000頭ものメスが産卵にやってくる世界最大の繁殖地でした。今は10頭以下となっています。コスタリカも同様に、年間産卵メスガメ数は50頭以下です。このままでは、メキシコとコスタリカもマレーシアのようにオサガメが絶滅する日は近いと予測されます。
激減した原因は?
オサガメは、なぜ絶滅の危機に瀕しているのでしょうか?ウミガメ研究者が標識放流の再捕結果から、マグロ延縄漁が原因でオサガメが激減したという論文が、2000年にネイチャー誌に記載されました。延縄の仕掛けは、深いときには300mの深さに仕掛けられます。そのため、ウミガメは肺呼吸なので、窒息死してしまいます。
しかし、これだけが、激減の要因なのでしょうか。もし、延縄漁だけが原因であるならば、世界中で延縄漁は行われているわけですから、世界中のオサガメが同時に激減するはずです。
実際は、太平洋地域だけがオサガメに急激な減少を見せており、大西洋では、僅かながら増加しています。
ELNAのパプアのオサガメ保全事業(概要)
2022年現在の活動地は、ワルマメディ海岸とジェンシュアップ海岸の2カ所です。過去には、ムブラニ地区でも活動を実施しました(2006年-2012年)。*近況や詳細は、各海岸のリンクからご覧いただけます
パプアでは、カウンターパートであるYPLI(Yayasn Penyu Laut Indonesia; インドネシアウミガメ研究センター)と共に、1999年からパプアのオサガメ保全事業を行っており、今年は20年目になります。太平洋には、オサガメの主要な産卵地は、パプアも含めてマレーシア、メキシコ、コスタリカの4か所しかありません。パプアもまた減少していますが、他の産卵地と比べるとその減少傾向は緩やかです。
(ELNA以外にも、米国のNMFS (National Marine Fishery Service)が指導しているパプア大、WWF-Idonesiaが調査を行っています。彼らの目的はオサガメ資源の動向調査ですが、前提として延縄漁による混獲がオサガメの減少要因としています。)
マレーシア、メキシコ、コスタリカのオサガメの産卵地をみてみると、卵の盗掘から卵を守るため、ふ化場に卵をまとめて埋めなおす、移植という保全事業が行われています。すべての卵が孵化場に埋め戻されます。パプアでも、パプア大は波の被る卵を上方へ移植する、WWFはできるだけ多くの卵をふ化場に移植するという保全事業が行われています。WWFの場合は、ふ化場でのふ化率は25%しかありません。例え波が被った産卵巣があっても、現在は自然ふ化の方がふ化率は60-70%あります。
また、オサガメに限らず、他のウミガメ類でも、卵を移植している産卵地で、繁殖数が増えた例は世界中どこにもありません。それにも関わらず、世界で移植が行われているのは、なぜでしょうか。オサガメに産卵阻害がみられるのに、科学的調査という名目がつくと、それが正当化されるのはなぜでしょうか。このような産卵地域での保全方法の在り方が、オサガメ激減の大きな要因になっているとELNAは考えています。
ELNAは、ウミガメのライフ・サイクルに立ち入らない方法で保全活動をしています。小笠原のアオウミガメでは標識装着はしていますが、オサガメでは、夜間パトロール自体を中止して、標識装着も現在行っていません。
実際に海岸を歩いてオサガメと接していると、様々なことが分かってきます。衛星発信機を装着すると、本来9日目ごとに産卵するオサガメの産卵が20日目となったり、年間の産卵回数が減少したりします。10mくらい離れたところで、上陸直後のオサガメを見つけて、じっとしていてもオサガメはくるっと反転して、海に戻ってしまいます。オサガメは巨体ですが、実はとっても敏感なウミガメなのです。
現在、ELNAでは、卵の移植や産卵に対する悪影響を科学的に証明する調査を行っています。その一方で、パプアのオサガメ産卵地の一部の海岸を独占し、オサガメの資源回復事業も行っています。
ELNAのオサガメ調査・保全活動
個体回復のための活動
・産卵数のモニタリング調査 →活動例:2019年、2022年
・減少原因を究明し、その原因を取り除く
・ブタによる食害対策としての電気柵の設置
絶滅させないための活動
・パートナー団体職員の育成
・現地住民への環境教育活動
・行政機関への働きかけ
生態解明
・正しい保全手法を選択するための手法としての生態解明
活動地域以外のウミガメ保全にも貢献する活動
・得られた知見の公表(論文や国際会議での公表)→活動例:2019年国際会議
支援のお願い
「世界最大のウミガメ。絶滅寸前の太平洋のオサガメを救おう!」
絶滅寸前のオサガメを、インドネシア西パプア州で救う活動です。一番の目標は『重要な産卵地の個体群を絶滅させない』ことで、個体数の回復を目指す活動です。
認定NPO法人エバーラスティング・ネイチャー(ELNA)が、現地パートナー団体インドネシアウミガメ研究センター(YPLI)と協力して2000年から活動を実施しています。
Give one(ギブワン)でプロジェクト継続のためのご寄付を集めています。