新規開拓 -オサガメは救えるか-(No.11)

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2004年12月にインドネシアのパプア州に行った。これまでのジャムルスバ・メディ地域が目的ではない。太平洋最大のオサガメの繁殖地であるパプア州にはかつて6つの繁殖地域があった。しかし、すでに3地域は絶滅しており1つは風前の灯火である。年間産卵巣数は50巣にも満たない。ジャムルスバ・メディ地域を除いた残りの1つはウェルモン地域である。ウェルモン地域はジャムルスバ・メディ地域のように4つの海岸から形成されているわけではなく、1つの海岸から成り立っているのでウェルモン海岸とも言う。全長6kmほどの小さな海岸である。

季節は雨期である。北西の卓越風が吹き海は荒れている。さらに悪いことに蚊やアガスと呼ばれるサンドフライ、別名サシバエが大繁殖しているのである。アガスは1mmにも満たない小さなハエである。こいつに咬まれると小さなボッチができ非常にかゆいのである。また寄生虫の寄生率が15%あるとも言われている。その寄生虫の症状はよくわかっておらず、当然のことながら治療法もない。咬まれないような最善の努力はしているのだが毎回20-30カ所くらいはやられてしまう。同行する人たちの中には片腕だけでも100カ所以上咬まれる人もいる。今年度3回目のパプアであるが今回を含めて計3名ものマラリア患者がでてしまった。延べ12名であるので4分の1の確率で感染することになる。 予防薬を飲用しているのだが、その薬の耐性マラリアが最近報告されているという。困ったものである。

ウェルモン海岸でのオサガメの繁殖期は日本で言う冬場であると言われている。これが本当なら、わずか20kmほどしか離れていないジャムルスバ・メディ地域では夏場が繁殖地であるので比較すると非常に興味深いものがある。繁殖規模は500巣とも1500巣とも言われている。もし本当にこれだけの産卵数があるとすると、これまで放置されていたことが嘘のようである。

ウェルモン海岸を管理しているワウ村に行き状況の聞き取りを行ったのは8月であった。村から5kmほど離れている海岸を所有している通称メガワティおばさんがすべてを取り仕切り卵の採集をしていた。4家族がこの採集をしており、彼らは卵で得られる収入だけで生活をしていたのである。遠くから眺める海岸は熱帯雨林の中に静かにたたずみ、まさしくオサガメの産卵に適したように感じられる。よく見ると後背地のジャングルはきれいにはぎ取られている。海岸には伐採された木材が放置されており、開発の爪痕が生々しく残っていた。なんともやりきれなくなる。すでに背丈ほどの草が多い茂り、その緑が少し気分を転換させてくれる。

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