海岸環境が変わってきた⁉セガマB島の近況

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ウミガメ保全に携わる人々が気になるのは、海岸の環境に起きる変化です。
孵卵環境がタイマイに適しているためか、多くの赤ちゃんを生み出してきたセガマ・ブサール島(以下、セガマB島)ですが、近年変化が出てきました
最近の現場の近況を報告します。
ウミガメにとって捕食者の増加や産卵頭数が増える(=産卵が集中する)などの環境が変化することで、卵や子ガメの生存率にも影響があります。この記事では、最近の保全活動地の海岸環境の変化や、それに伴うウミガメの繁殖・生存への影響について解説します。さらに、今後の活動方針や展望についても紹介します。ウミガメ保全に関心のある人は必読です。


▼ 本記事の内容
1. ウミガメ保全の現状@セガマB島
2. 島の環境変化の影響
3. 保全活動の未来展望


1. ウミガメ保全の現状@セガマB島

ELNAがタイマイ保全活動をおこなってきた島はセガマB島以外に4か所あります。それらの島は赤ちゃんガメ生産数(生まれてくる稚ガメの数)が年により大きく変動してきました。一方でセガマB島は活動開始の20年前から産卵数の増加と比例して安定的に赤ちゃんガメを生産してきた唯一の島です。
それが、2020年の産卵分から明らかな変化が現れ出しました。今まで1巣あたり平均50-70匹の赤ちゃんタイマイを生産してきたのですが、2022年産卵分を調査したところ30匹まで減少していることが明らかになりました。

上写真)セガマB島で、どれくらい赤ちゃんガメが生まれたのか調べている様子

2. 島の環境変化の影響

前項で セガマB島以外 の島は゛赤ちゃんガメ生産数が年により大きく変動してきた”と書きました。変動の理由は大きく分けて3つあります(産卵の増減による卵数の増減は省く)。①捕食者や自然災害の増減、②同海岸を産卵利用するカメの有無と増減、③ELNA側の努力度(卵監視員の働き度、調査のタイミング)です。
今回のセガマB島の事例では、①と②が関与していると考えられます。具体的には①捕食者であるミズオオトカゲの増加 ②産卵ガメの増加により巣が他の産卵ガメに掘られる の2要因です。特に①が大きく増加しています。以前からセガマ・ブサール島で見られるミズオオトカゲの数は増え、見られるサイズも大きい個体がより多く見られるようになってきていました。

上写真)ミズオオトカゲに掘り出されたタイマイ産卵巣と卵の殻(手前の白い物体)

一般的に自然界の<食う-食われる>の関係にある生きものは、互いに影響をあたえることで、生息数が周期的に変動すると言われます。例えば狼が増えれば餌となるウサギは減り、ウサギが減ると餌が不足した狼も減少、捕食者が減ったウサギは増加する。餌が増えたら狼も増加する・・・(の永遠の繰り返し)という現象です。
セガマB島でミズオオトカゲが増加し、肥えた個体が多くなった理由としては、今まで島で餌供給がなかったタイマイの卵が供給されるようになり(活動開始以前は全ての卵が人に取られていた)、かつタイマイの産卵が増えて餌となる卵がより増えたことに起因していると考えています。

3. 保全活動の未来展望

”ウミガメはどこまで個体数が回復したらよいのか?”
それは、ウミガメ研究者や保全に携わる人達なら知りたい答えの一つです。おそらく、種類や場所(個体群)、その個体群を取り巻く生息環境によっても異なるはずです。このセガマB島はウミガメとミズオオトカゲ<食う・食われる>以外の変動要因が比較的少なく、周期的変動の観察にとても適した島です。
ミズオオトカゲ によるウミガメ卵の捕食について他地域の保護産卵地では問題になっていたり、ELNAとしてもキマル島を中心に食害の軽減対策に努める活動もしてきましたが、セガマB島のタイマイ個体群は1980sの激減分(約8割減少した)の個体数回復に成功しており、かつ赤ちゃんガメの生産数も一定数確保できているため、大々的な食害対策は実施しないでしばらくは状況を見守りモニタリングを継続していく方針です。
セガマB島の環境においてミズオオトカゲという捕食者の存在によって、タイマイ産卵数と赤ちゃんガメ生産頭数の増減バランスが今後どう変動していくのでしょうか?!

”ウミガメはどこまで個体数が回復したらよいのか?”
その答えの片鱗が、この島での活動成果として少しでも明らかにできたらいいなとと思います。


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