ウミガメを絶滅から救う方法-4つの大事なこと-

Pocket

ウミガメを絶滅から救う。つまり絶滅危惧種の個体数を回復させる方法とは、何でしょうか!?
大事なことは、下記4つです。

  1. 絶滅の危機に瀕している要因を理解する
  2. 子孫を生み出していく事
  3. 状況を確認すること
  4. ウミガメを理解すること

一つずつ解説していきます。

—————————————-

1. 絶滅の危機に瀕している要因を理解する

ウミガメはその多くが絶滅危惧種ですが、絶滅に瀕している理由は、ウミガメの種類や場所によって異なります
まずは増やしたい対象のグループ(「個体群」という)が減少してしまった主要な原因や、個体数を回復させるのを阻害している主な原因を特定し、取り除く作業が必須です。

ELNA でやっている事例
タイマイ@ジャワ海
 ①主要産卵地を直接訪問。生息数と絶滅に貶める脅威状況の把握調査を実施(10年毎)
 ②現在の脅威である卵の乱獲をSTOP
 結果⇒ 4地域の活動地全部で 個体数が増加。うち1島はかつての減少分を回復でき、残りは回復途中(2022年現在)
オサガメ@西パプア州
 孵卵時の主要課題として、ブタ食害と卵の移殖を特定。また、産卵への悪影響として夜間パトロールを特定
 ①ブタ害回避策
 ②移殖問題と夜間パトロール問題を外部組織へ訴える
 ③ELNAが実施している夜間調査の見直し
  結果 ⇒  まだ個体数を増やせていません。数の減少が収まってきた状況 (2022年現在)
アオウミガメ@小笠原
 ①過去の乱獲により激減したことを解明・公表
 ②島外を回遊している際の脅威状況を把握する調査として、死亡漂着や混獲された個体の調査@関東
  結果 ⇒ 個体数の増加が見られている。個体数回復途中 (2022年現在)

2. 子孫を生み出していく事

野生動物を絶滅させないためには、どういう状況があれば絶滅しないでしょうか?
そう。子孫が生まれてくる状況を永遠に保てていれば、種が途絶えることはありません。たとえ死亡してしまうウミガメがいても、子供が生まれ続けてくれさえすれば維持できます。逆に、子孫が生まれて来なければ、その種は絶滅してしまいます。

ウミガメの場合は「産卵地を守る」ことが大事になります。

そのためELNAは、ウミガメ3種の重要な産卵地を守る活動をしているのです
タイマイ@ジャワ海絶滅危惧ⅠA 類  ※アジア最大規模の産卵地。アオウミガメ( 絶滅危惧ⅠB 類 )も産卵します
オサガメ@西パプア州絶滅危惧ⅠA 類  ※太平洋最大の産卵地。 ヒメウミガメ(絶滅危惧Ⅱ類)も産卵 します
アオウミガメ@小笠原絶滅危惧ⅠB 類 ※日本最大の産卵地

3. 状況を確認すること

野生動物の保全は、その生物が置かれている状況を把握するために特に数値で状況を把握しておくことが大事です。
『生息数が多いのか?少ないのか?』『減っているのか?』
『活動の結果、増えたのか?減り続けているのか?』
『主な死因は何か?』『種の存続を脅かすほどの脅威なのか??』
これらすべて数値がないと確認できません

ウミガメの場合は、頭数や死亡原因を数値化する作業をします。短期的な結果で一喜一憂していても意味がありません。長期的な変動を確認することが重要です。今、世界の各地でも、やっと長期的なデータが出てくるようになってきたところです。長期的なデータがあれば、環境変化や異常を察知することもできます。
もしも数値を確認しなければ、何の指標も無い中でやみくもに保全活動をすることになります。

ELNAでやっていること

・ 小笠原:産卵数稚ガメ生産数、ふ化状況などモニタリング調査 →IUCNレッドリストへデータ提出、論文等
・ 関東:死亡漂着・混獲調査 →シンポジウムや雑誌で公表
・ ジャワ海:産卵数、稚ガメ生産数、ふ化状況などモニタリング調査  →IUCNIOSEAへ データ提出 、論文
・ 西パプア州:産卵数、稚ガメ生産数、ふ化状況などモニタリング調査
・ プラスチックのウミガメへの影響調査 @関東、小笠原
・ ウミガメ放射能汚染モニタリング調査 @関東 (2012年-2014年度)

4. ウミガメを理解すること

野生動物を保全するためには、対象の生物の生態や行動、生存戦略や生体機能などの基礎情報を理解することは重要です。この基礎知識が無いと、取得したデータから、ウミガメの状況を正しく理解することはできません。絶滅に追いやっている原因も理解することができないでしょう。

「ウミガメの基礎生態なんてもう分かっているでしょう?!」と思われますか??
とんでもない、寿命も分かっていません!成熟年齢もあくまで推定値。ウミガメの科学は日々更新されていっているのです。そして地域によってその生態も異なるのです。
また、ウミガメ保護の歴史では、生態を知らなかったばかりに間違った保護活動もされてきました
今、私たち人間が“ウミガメに良かれ”と思ってやっていることは、本当に正しいのでしょうか?
最新情報を把握することと、自分のフィールドで気づき・確認する作業が、ウミガメ界ではまだまだ必要な状況です。

ELNAでやっていること

・ ELNA独自or共同研究にて、生態解明
・ 基礎調査(標識放流調査@小笠原・インドネシア、飼育@小笠原、死亡個体調査@関東・小笠原)
・ 国内外のウミガメシンポジウム等へ参加して情報収集や意見交換( 2019年USA2018年神戸2015年トルコ )
・ 各スタッフがウミガメ等に関する情報収集

—————————————-

いかがでしたでしょうか?
ウミガメのために個人レベルでできる事もありますが、”絶滅から救う=数を回復させる”作業は個人ではできない作業になります。
ELNAはウミガメ保全団体として、引き続き絶滅させないための具体的な作業に取り組んで参ります。
しかし、このウミガメを絶滅から救い、豊かな海洋環境を保全する活動は、沢山の方のご支援・ご協力なしには実現できません。
皆さまにおかれましても、保全活動のサポーターとして、ELNAの活動を支えて頂ければ幸いです。

 →個人のご支援者様はこちら

 →法人のご支援者様はこちら

関連記事

  1. 海亀保全が必要なワケ
  2. 小笠原のアオウミガメはなぜ減った?なぜ増えた?
  3. ウミガメを食べつつ増やす?!小笠原は世界でも珍しいアオウミガメの…
  4. ウミガメの口の形のヒミツ
  5. 子ガメの放流会の問題点とは?
  6. ウミガメの見分け方!アカorアオウミガメの骨
  7. ウミガメはビニール袋を食べて死んでいるの??調査でわかること
  8. ウミガメを守るため、私たちにできる10のこと
PAGE TOP