終了報告「ウミガメの知られざる生態に迫れ!バイオロギングの世界と海洋ゴミ誤飲問題」
2月25日(木)19:00-20:30にてオンラインイベントを開催しました。講師はバイオロギング研究の最前線で活躍されいている福岡拓也氏!現在、三陸地方を拠点に、海洋生物の調査・研究をされています。
バイオロギング研究とは・・・海の中にはたくさんの生物が住んでいます。しかし、海の世界や生物は、人間が直接見ることが難しく、その実態はほとんど明らかになっていません。バイオロギング研究では、データロガーという小型記録計をとりつけて、動物の行動データをとったり、小型カメラをとりつけて動物の行動を観察したりします。これにより、海の生物の生態や行動、生物をとりまく環境など、今までわかっていなかった海に関する様々な情報を得ることができます。
講演の内容をピックアップして少しご紹介します!
ウミガメはクラゲ好き!
ELNAでもウミガメの漂着個体の調査をしており、何を食べているのかを調べています。そうすると、藻類、海草、貝、魚、ヤドカリが出てきます。一般的にも、アカウミガメはカニやヤドカリなどを食べ、アオウミガメは藻類を食べる、と言われてきました。
小型カメラを装着して、ウミガメが何を食べているのかを記録したところ、アオウミガメもアカウミガメもクラゲをたくさん食していることがわかったそうです。クラゲは消化管内ですぐに溶けてしまうので、漂着調査では発見することが難しかったのです。
実際にウミガメの食事シーンを観察することができたからこその発見だと感じました。
ゴミの誤飲率の違い
今回はバイオロギング研究でわかったゴミの誤飲問題についてお話いただきました。
ゴミの誤飲率というのは、日本の中でも地域によって差があります。例えば、沖縄の方はウミガメのゴミ誤飲率が低いが、小笠原はウミガメのゴミ誤飲率が高い・・・など。ウミガメに発信機をつけて行動を観察すると、ゴミの誤飲率が高いウミガメ達は、長距離を泳ぐためにゴミに遭遇する確率が高くなっているそうです。
また、誤飲率はウミガメの種類によっても違います。三陸にやってくるウミガメ達は、アオウミガメはゴミを誤飲している割合が多く、アカウミガメは少ない、ということでした。なぜなら、アカウミガメに比べて、アオウミガメは海の浅い場所を泳ぐ傾向があるため、海面近くを浮遊するゴミに遭遇する確率が高くなっているとのことでした。
ゴミに遭遇した時に、アオウミガメはそのまま食べてしまうことが多い、アカウミガメはゴミを食べずに通過するということも小型カメラの映像でわかったそうです。アカウミガメは肉食性でカニなど動くものを好んで食べています。ふわふわ漂っているゴミとカニ(餌)の違いがわかわるのかもしれません。アオウミガメは藻類などあまり動かないものを食べているので、ゴミと海藻(餌)の見分けがつきにくいのかもしれないとのことでした。
海の中でのウミガメの暮らしを、外から観察することはとても難しいです。しかし、バイオロギング研究により、ウミガメの生態や行動がわかると、なぜ誤飲率に違いが出るのかなど、様々なことがわかってくるのです。とても興味深いですね!
ウミガメはゴミが原因で死んでいるのか?
ウミガメがゴミを食べて死んでいる、ということを耳にしたりもしますが、福岡氏の調査では、ウミガメのお腹にゴミがパンパンにつまってしまう(腸閉塞)ことはほとんどない、とのこと。ELANの漂着個体調査でも同様のことが言えます。
それよりもウミガメの個体数が減少している原因として、生息地の破壊(自然の砂浜の減少)、混獲、間違ったウミガメ保護、などの問題があります。ゴミ問題にばかり目が行ってしまい、ウミガメを絶滅に追いやる本当の原因が見えづらくなってしまっていることが危惧されています。
ウミガメが天気予報?!ウミガメが人を守る
バイオロギング研究ではウミガメによる気象情報の予測をするという研究が進んでいます。ウミガメに計測器を装着することで、海水温のデータを集めてくるのです。気象情報の予測には、この海水温の変化が重要になります。ウミガメが集めた海水温データにより、より精度の高い気象情報の予測が可能になるとのことでした。ウミガメが天気予報に貢献してくれるとは驚きですよね。
ウミガメは絶滅危惧種なので、ELNAはウミガメを保全する活動をしています。人がウミガメを守るのです。しかし、近い将来、ウミガメが人(の暮らし)を守る、そんな時代が来るのかもしれません。
ご参加いただきました皆様、ありがとうございました!福岡氏もまだまだお話したいことがたくさんあったそうなので、三陸での調査の話、バイオロギング研究の話をしていただく機会を設けたいと思います。乞うご期待!